1.体調が不安定な場合
退所したいと考える理由で最も多いのが、体調が優れないという理由です。
そもそも休職中は心身に不調がある上、通勤をしないことで少なからず体力が落ちている状態からリワークを利用し始めるため、通所する体力がもたなかったり疲れて体調を崩したりすることもあります。
とはいえ、リワークに通所できる体調ではないと感じるからといって、必ずしも退所を考える必要はありません。
体調が不安定で行きたくないと考える場合は、まず主治医やスタッフに相談することが大切です。
その上で、以下のふたつの対処のうち、どちらが適切かを検討します。
1.通所の日数や時間を見直し、負荷を減らして通所する。
2.一定期間の療養を取り、体調が改善してから再び通所を開始する。
メンタル不調を抱えていると「決まった日時に通所できないなら意味がない」「また休んでしまった。もう退所するしかない」というような極端かつ後ろ向きな考えになってしまうこともあります。そのような考えに引きずられて行動すると、後悔することになりかねません。自分の体調に合わせて無理のない対処をすることで、将来的に安定して通所できるようになります。
一方、リワークに通うことで体調に悪い影響が出てしまう場合は、退所も選択肢のひとつとなります。しかし、そのような場合であってもスタッフに相談し、体調不良の原因になっていることを明確にしておく必要があります。原因がわからないままで退所してしまうと、他の環境に移った際に再び体調を崩す恐れがあります。
そのため、体調不良のきっかけを明確にした上で、通所を継続できるか退所した方が良いかを考えることが大切です。
2.面倒に感じてしまう場合
退所を考える理由で体調不良の次に多いのは、リワークに通うことが面倒に感じてしまうという理由です。特に、リワークに通い始めて間もない方が多い傾向にあります。
面倒に感じる理由として、「生活習慣が乱れているため朝起きられない」、または「通所が習慣化されていない」という点が考えられます。
またメンタル不調の症状として「おっくうだ」「何をするのも面倒」という気分が現れることもあります。
そのような理由でリワークを退所することは、復職においても心身の回復においても逆効果となる可能性が高いといえます。退所してしまうと、むしろ生活習慣が乱れて復職そのものが遠のいてしまう危険性もあります。
また、面倒に感じてしまう心身の状態を改善する機会を逃して、復職後も同じような経緯をたどって会社を退職するリスクも高まります。
リワークに通い続けるうちに、生活習慣が整い、通所が習慣となれば、面倒に感じる気分は少しずつ軽減していきます。慣れるまではつらい時期が続きますが、面倒に感じる状態だからこそ通所を継続できるように工夫したいものです。
どうしても体が動かないと感じるときでもスタッフへの連絡は欠かさず行い、対処法を相談することが大切です。
3.リワークに意味を見出せない場合
リワークへの通所に意味を見い出せず、利用しなくても復職ができると考えて退所を検討する方もいます。特に、プログラム内容だけを基準にしてリワークへの通所を取捨選択する方に多い理由です。
通うことの意味を見いだせなくなったときは、リワークに通う目的を見直す必要があるかもしれません。もちろん、リワーク通所の最大の目的は復職の成功です。そのためには下記に挙げるような目的を達成していくことが重要です。
[リワークに通う目的]
・通勤訓練
・体力づくり
・社会交流
・集団での活動
・生活習慣の安定
・プログラムの受講
など
「プログラム内容が自分に合わない」「プログラム受講に意味が見出せない」などの理由だけで安易に退所を判断してしまうと、その他のリワークの目的が達成できなくなります。
中でも「通勤訓練」「生活習慣の安定」は、復職できる心身の状態をつくる重要な基礎となる上に、ひとりで実行から記録まで行うのは困難を伴う部分もあります。
多くの企業では、復職の可否を判断する際にはプログラムの受講実績よりもリワークへの通所実績や生活習慣の安定を重視しています。
このようなリワークの意義と目的を理解した上で、リワークを退所してもひとりで達成できるかを再検討することによって、適切な判断ができるようになります。
復職の成功とリワークの効果については、こちらの記事【リワーク支援と再発率に関するデータ|リワークプログラムの効果は?】でも解説しています。
4.人間関係が上手くいかない場合
他の利用者やスタッフとの関係性から、退所したいと考える方もいます。「自分に問題があるから退所するしかない」と判断を急いでしまうことも少なくありません。
そのようなときも、退所を決断する前にスタッフに相談して対処法を考えることで、解決する場合があります。
多くのリワーク施設では、対人関係スキルを学ぶプログラムを提供しています。人間関係を理由にリワークを退所するより、復職後も人間関係で悩んだときに対処できるようリワークの期間で対処法を学ぶことが重要です。
復職後に、必ずしも人間関係の悩みから解放されるとは限りません。厚生労働省が平成30年に行った「労働安全衛生調査」でも、働いている方の多くが対人関係で強いストレスを感じていることが明らかになっています。
リワークを退所してしまうと対処法を学ぶ機会を得られず、同じようなシチュエーションがあったときに会社を退職してしまう可能性が高まります。
スタッフに対しては、注意されたことから不快に感じる方もいます。そのスタッフの言葉を「注意」や「批判」と受け取るか「復職後も安定して働くためのアドバイス」と受け止めるかによっても気分は変わってくるものです。そのような場合は、物事の受け止め方(認知)をトレーニングする認知行動療法に基づくプログラムを受講することも解決策のひとつです。
その他、スタッフ個人との相性やトラブルなどは、別のスタッフに相談することによって客観的な意見を聞いて対処法を考えることができます。
いずれの場合でも「退所」ではなく、「対処」で解決することが重要です。(休職期間を有意義に過ごすためのリワーク施設の見学申し込みはコチラから)
5.復職許可がおりない場合
リワークのスタッフや医師から復職の許可がおりないことで退所を検討する方もいます。リワークに一定期間通えば、必ず復職の許可が得られるということではありません。スタッフや医師から復職の許可がおりない場合は必ず理由があります。
理由がわからないまま退所して別のリワークに移ったとしても、同じような結果になる可能性があります。
リワークのスタッフや医師が復職を許可できないと判断する理由には、下記のようなものがあります。
[復職の許可がおりない理由]
・通所が安定しない
・集中力が戻っていない
・生活習慣が乱れている
・体調が安定していない など
自分では復職できると思っていても、客観的に見て「遅刻や欠席が多い」「課題を完成させられない」といった状態であれば、復職するには時期尚早と判断されます。
復職できるかどうかを判断するのは本人ではなく、主治医や産業医、企業の人事などの他者であることがほとんどです。つまり、客観的に見たときに復職できる状態になっているかどうかが重要です。リワークのスタッフも客観的な視点で復職の可否を考えています。
回復への手ごたえを感じると、復職したいという気持ちが強くなるかもしれません。また、リワークに通ううちに復職への焦りが出てくる場合もあります。そのようなときは自分ひとりで決断せず、スタッフや医師の客観的な意見や判断を確認することが大切です。
まとめ
体調が優れない場合は、体調不良の原因を理解して通所の負荷を調整する等の対策をスタッフと相談しましょう。
通所が面倒に感じる場合、しばらくつらい時期が続くかもしれませんが習慣となるまで通所することが大切です。通所が習慣化する頃には生活習慣も安定し、面倒に感じることも少なくなります。
リワークに意味を感じない場合は、目的の見直しを行い、ひとりで達成できるかを再検討します。
人間関係がうまくいかない場合は、スタッフに相談したり対処法を学んだりすることで、復職後の人間関係の悩みに対処できるようになります。
退所には、デメリットやリスクが伴います。生活習慣を安定させられる環境から離れることで復職が遠のいたり、仕事や通勤に必要な体力が身につかなかったりする可能性があるからです。ひとりでは対策が思い浮かばなかったり解決が難しかったりする場合は、スタッフに相談するのも良い対処法です。
リワークに通うことで体調に悪い影響がある場合を除いては、できるだけ退所は避けて他の対応を検討することが大切です。
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※ニューロリワークでご提供するプログラムは、事業所や季節・時期によって異なります。
事業所ごとのプログラムは各センターの紹介ページにて掲載させていただいております。
ご興味のある方は以下のリンクよりご確認ください。
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■ニューロリワーク横浜関内センター
横浜関内センタープログラム表
■ニューロリワーク梅田センター
梅田センタープログラム表
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博多センタープログラム表
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【参考文献・参考サイト】
・平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)
(写真素材:PIXTA・photoAC)