1.データから見るリワークプログラムの効果
リワークとは、「職場復帰」という意味の英語“return to work”の略語です。単に「復職」というと産休・育休や身体的な病気からの復帰等も含まれますが、リワークは主に心の健康問題で休職や離職した方が行う職場復帰に向けたウォーミングアップやリハビリテーションを意味します。
メンタルヘルスの不調で休職する方の中には、復職できずに離職する方や復職までに長い期間を要する方、復職しても休職を繰り返す方もいます。この点、リワークプログラムを受けた方は「復職の可能性が高まる」「復職までにかかる期間が短くなる」「復職後も継続して働ける」といった研究結果があります。
以下では、これらの研究結果について詳しく見ていきます。
1-1.復職の可能性が高まる
メンタル不調で休職していた方の復職に関するデータについては、下記のような調査結果があります。
【リワークプログラムを受けなかった場合の復職率】
⇒55.5%(うち9.5%は復職後に退職、8.2%は再休職)(※1)
出典:
※1【調査シリーズNo.100職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査(2012年)|労働政策研究・研修機構(JILPT)】
【リワークプログラムを受けた場合の復職率】
⇒約90%(※2)
出典:
※2【職場復帰支援の再考―職場に焦点化した集団認知行動療法プログラムの試み―|心身医学2018年58巻4号】
これらのデータから、リワークプログラムを受けなかった場合は約半数の方が復職できなかったのに対し、リワークプログラムを受けた場合は80%前後の方が復職に成功していることがわかります。
1-2.復職までにかかる期間が短くなる
休職していた方が再び就職や復職をするまでの期間については、海外の6件の研究を分析したところ、認知行動療法を復職支援プログラムとして受けた場合に休業期間が18.6日短縮されたという研究結果があります。(※3)
この論文は科学的根拠のある研究論文をくまなく検索して一定の基準でとりまとめるシステマティックレビューと、それを分析するメタアナリシスという手法を用いていることから、科学的に信頼性の高い研究結果といえます。
出典:
※3【休業者に対する復職支援プログラムの有用性:システマティックレビュー|産業衛生学雑誌2018年60巻6号】
リワークプログラムを受けていない場合、復職にかかる期間はうつ病で平均275.3日(※4)や286.5日(※5)、メンタル不調全般で平均107日(※6)や441日(※7)といったデータがあり、他の障害に比べても長い傾向があります。(※4、8)
出典:
※4【A survey of support systems for return to work in Japanese companies: a cross-sectional study|Industrial Health 2016年54巻6号 p.564-572】
※5【平成28・29年度 労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書|精神疾患により長期療養する労働者の病状の的確な把握方法及び治ゆの判断に係る臨床研究「精神疾患に罹患した労働者の治療経過・寛解に影響する要因と疾患群の標準的な療養期間に関する研究】
※6【平成28年度 労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書|主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究「病休と復職支援に関する調査と分析」】
※7【回復期にある精神疾患患者を対象とした運動療法の試み|体力研究2009年107巻p.15-22】
※8【企業における長期休業者に関する実態調査(2012年)】
1-3.データで見る就職・復職後の就労継続率
メンタル不調のある方が就職あるいは復職した日から1年経った時点で就労を継続していた割合については、以下のような調査結果があります。
出典:
※9【障害者の就業状況等に関する調査研究|2017年4月|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター】
※10【障害者職業センターの支援を受けた精神障害を有する求職者の就職・職場定着状況等に関する調査研究-精神障害を有する求職者の実態に関する調査研究Ⅱ-|2015年04月|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター】
※11【平成24年度 厚生労働省障害者対策総合研究事業「うつ病患者に対する復職支援体制の確立 うつ病患者に対する社会復帰プログラムに関する研究」分担研究報告書「日常臨床における職場復帰の実態」】
※12【平成22年度 厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「リワークプログラムを中心とするうつ病の早期発見から職場復帰に至る包括的治療に関する研究」分担研究報告書「社会適応評価ツールの有用性の検討 職場復帰に関する生物学的指標の開発」】
※13【わが国における復職支援の現状と課題(勤労者のメンタルヘルスに関する予防活動-心身医学的な視点から-,2011年,第52回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜))|心身医学52巻(2012)8号】
※14【平成28年度 厚生労働科学研究費補助金「精神障害者の就労移行を促進するための研究」】
※15【平成25年度 厚生労働省障害者対策総合研究事業「うつ病患者に対する復職支援体制の確立 うつ病患者に対する社会復帰プログラムに関する研究」分担研究報告書「リワークプログラム利用者の復職後2年間の予後調査」】
※16【メンタルヘルス不調者の出社継続率を91.6%に改善した復職支援プログラムの効果|産業衛生学雑誌2012年54巻6号】
調査方法や期間などでばらつきはあるものの、いずれのデータを比較してもリワークプログラムを受けたグループの方が働き続けている割合が高いことがわかります。特に調査Bにおける3年後の比較データではリワークプログラムを受けていない場合の継続率は22.4%、受けた場合は50.3%と約2倍もの違いがありました。
これらのデータから、リワークプログラムを受けることにより復職後も再休職や離職することなく安定して働き続けられるということがわかります。
2.効果的なリワークプログラムとは
復職・再就職を成功させる効果的なプログラムとは、どのようなものでしょうか。
障害者職業総合センターの「気分障害を有する者への雇用促進・雇用継続支援技法に関する研究」(※17)によると、気分障害で離職した方と離職後に再就職した方を比較したところ、再就職した方には「リワークを含む様々な復職支援サービスを利用している」「生活リズムが整っている」「ストレス耐性が高い」「活動性が高い」といった特徴がみられました。
なお、ほぼ全てのリワーク施設が生活リズムを整えるプログラムを提供しています。また「ストレス耐性を高める」「活動性を高める」プログラムも多くのリワーク施設で提供されています。
また、うつ病で休職している方が復職に対して感じる困難は3つの要素に分けられるという研究結果もあります(※18)。その3つの困難とは、フルタイム勤務ができるかといった「職場で必要な体力面の困難」、病気のことを理解されるかといった「職場復帰後の対人面での困難」、仕事に必要な集中力や判断力が低下していないかといった「職務に必要な認知機能面での困難」です。
これら3つの困難を軽減することも、復職や再就職のための大きなポイントです。
出典:
※17【気分障害を有する者への雇用促進・雇用継続支援技法に関する研究|障害者職業総合センターNIVR】
※18【うつ病休職者の職場復帰の困難感と社会機能およびうつ症状との関連:職場復帰の困難感尺度の作成|行動療法研究2012年38巻1号】
以下では、多岐にわたるリワークプログラムの中から「認知行動療法」「マインドフルネス」「運動プログラム」の3つについて研究結果やデータを通して見ていきます。
2-1.認知行動療法
認知行動療法は、心の健康を回復させる効果が確認されている心理療法の一種です。
認知とは、物事の受け止め方やとらえ方のことをいいます。大きなストレスを受けると認知が偏ったり極端になったりして必要以上に落ち込み、そのせいで悪循環となる行動をしてしまうといったことが起こります。認知行動療法を通して、そのような認知と行動の傾向を知り、より現実的で柔軟な認知を選んでバランスのとれた思考ができるようになれば、ストレスにも対応できる心の状態が期待できます。
特にグループで行う集団認知行動療法がリワークに有効であるという研究結果もあり、集団認知行動療法プログラムを提供しているリワーク施設もあります。
たとえば、北海道大学病院精神科神経科の調査では集団認知行動療法と作業療法を組み合わせたプログラムを12週間行ったところ72.7%が復職し、2年後も1名以外は就労を継続していたとの報告があります。(※19)
他の研究結果では、集団認知行動療法に特有の「相手にどういう印象を与えるか学べたこと」「他者を参考にできたこと」等が心の健康状態の回復に長期間影響したことによって復職率がプログラム終了時の25%から、6ヶ月後54.2%、12ヶ月後62.5%と上昇し続けたことが報告されています。(※20)
一方、うつ症状の改善や日常生活を送る上で必要な社会機能の回復には効果があったものの、認知行動療法だけでは職場復帰への困難感は低減されなかったという研究結果もあります。(※21)
つまり、認知行動療法には心の健康を回復させることで復職に向かう心の準備を整える効果が期待できますが、さらに復職の困難感を軽減するには復職に特化したプログラムである必要があるということになります。
前述の通り、復職の困難感には「職場で必要な体力面の困難」「職場復帰後の対人面での困難」「職務に必要な認知機能面での困難」の3要素があります。
以下では、復職に特化したプログラムが復職の難しさを改善するという研究成果についてみていきます。
2018年の論文では、職場復帰後に想定される問題や職場復帰の不安に対処するスキルを身につける要素を加えた集団認知行動療法プログラムの効果について報告されています。
うつ症状で休職している人を対象にプログラムを受ける前と後の心理テストの結果を比較したところ、職場復帰後の対人面の困難と職務に必要な認知機能面の困難が改善したことが明らかになりました。またプログラムを終了した人の内9割が復職し、7割が復職3ヶ月後も就労を維持していたことも確認されました。(※22)
同じ研究チームによる2019年の研究では、職場復帰の困難感が高い休職者を対象にした職場復帰後に生じると想定される問題に焦点を当てた集団認知行動療法について調査分析が行われました。
調査の結果、プログラム実施後は「職場復帰後の対人面での困難」と「職務に必要な認知機能面での困難」が改善したことが確認されました。プログラムを終了した参加者21名すべてが職場に復帰したことからも、復職困難感に焦点を当てた集団認知行動療法は復職の成功に有効であることが示されました。
またプログラム実施前にグループで行うことのポジティブな側面である、同じ悩みをもつ参加者と互いに支え合える「サポート機能」、参加者のコメントや考えから学べる「教育機能」、良い面を見つけ合うことで自信が持てるようになる「強化機能」について説明したことが継続的な参加につながった点も示唆されています。(※23)
他の研究チームによる調査では、復職できるという自信を高める要素を組み込んだ認知行動療法プログラムを実施した結果、「定期的な運動をする」といった体力面や「上司に復職面談について相談する」といった面で復職への自信が増大したことが確認されました。(※24)
これらの研究成果からもわかるように、復職に特化した認知行動療法プログラムであることが復職を成功に近づけるポイントといえます。
出典:
※19【うつ病患者の復職支援の取り組みとその有効性(シンポジウム:職場のメンタルヘルス最前線,2008年,第49回日本心身医学会総会(札幌))|心身医学49巻(2009)2号】
※20【在職うつ病男性を対象とした集団認知行動療法の効果とその要因|昭和学士会雑誌79巻(2019)2号】
※21【うつ病休職者に対する心理職による集団認知行動療法の効果:うつ症状、社会機能、職場復帰の困難感の視点から(<特集>日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法のエビデンス)|行動療法研究2012年38巻3号】
※22【職場復帰支援の再考―職場に焦点化した集団認知行動療法プログラムの試み―|心身医学2018年58巻4号】
※23【うつ症状を主訴とした休職者に対する職場の問題に焦点化した集団認知行動療法の効果—職場復帰困難感に着目して—|認知行動療法研究2019年45巻3号】
※24【精神障害による休職者の復職セルフエフィカシーを高める介入プログラムの検討|Journal of Health Psychology Research 31巻(2018)Special_issue号】
2-2.マインドフルネス
マインドフルネスは「評価や判断をせずに今この瞬間の体験へ注意を向けること」を指します。ビジネスパーソンのメンタルヘルスケアの技術として、最初に欧米で流行しました。日本では、アメリカの名だたる大企業が取り入れたことから知られるようになりました。
「Mindfulness」という言葉が仏教のSati(サティ、念、気づき)という概念の英訳であることからもわかるように、日本でも馴染み深い座禅や瞑想といった東洋の文化がルーツとなっています。1970年代にアメリカで心理学などの医師や科学者が開発してから現在に至るまで、実践する人の信仰にかかわらず科学的に効果が認められている技術です。
マインドフルネスには抑うつ症状や不安症状を改善しストレスを低減させ、慢性疼痛についても軽減させる効果があります。そのような効果から、認知行動療法などの心理療法に取り入れられることもあります。
2013年にデンマークで行われたマインドフルネスに関する研究では、仕事関連のストレスで休職中の人をランダムに3グループに分けて調査しました。マインドフルネスによるストレス低減法を導入した復職プログラムを実施する第一グループ、通常の治療をする第二グループ、治療待ちの第三グループに分けて3ヶ月調査した結果、第一と第二グループではストレス症状が低減し、職場復帰率も第二グループは36%、第三グループは24%でしたが、第一グループは67%がフルタイムで復帰しました。
このことから、マインドフルネスを導入した復職プログラムは職場復帰率を高めることが示唆されています。(※25)
2014年のノルウェーの研究でも、マインドフルネスを取り入れた復職プログラムを受けた人の内47%が復職から2年以上経過しても就労を継続していました。さらに詳細な分析によってマインドフルネスが休職者の生活の質を改善することや職場復帰に必要な作業能力を向上させることが確認され、マインドフルネスが復職に良い影響を与えることが示されました。(※26)
日本の研究においても、マインドフルネスを組み込んだ認知行動療法を4週間にわたってWeb経由で実施したことによって休職者の復職困難感が低下し、社会適応度が向上したことが報告されています。(※27)
このように、ストレス低減や復職困難感の軽減などに効果が認められているマインドフルネスは、日常的なセルフケアだけでなく復職の成功にも有意義な技術といえます。
Webやスマホアプリなどを使って個人的に実践することもできますが、休職している方であればマインドフルネスのプログラムを提供しているリワーク施設を利用するのも選択肢のひとつとして挙げられます。
出典:
※25【Effects of a Multidisciplinary Stress Treatment Programme on Patient Return to Work Rate and Symptom Reduction: Results from a Randomised, Wait-List Controlled Trial|Psychotherapy and Psychosomatics 2013, Vol.82, No.3】
※26【Return to work after vocational rehabilitation: does mindfulness matter?|Psychol Res Behav Manag. 2014; 7: 77–88.】
※27【慈しみに焦点を当てたWebベースの認知行動療法の開発|KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)課題番号19K20995】
2-3.運動プログラム
多くの方が「運動は心身の健康に良い影響を与える」というイメージをもっているように、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」でも日常的に体を動かすことは生活習慣病だけでなく、うつになるリスクも下げると記されています。
復職においても、「職場で必要な体力面の困難」を低減させる効果や心の健康状態を改善する効果を目的として運動プログラムを提供しているリワーク施設もあります。
運動がうつの症状やメンタルヘルスを改善する効果については、多くの研究論文があります。
1980年~2002年に発表された研究を網羅し再検討した論文によると、有酸素運動か無酸素運動か、一時的か継続的かにかかわらず、あらゆる年齢や性別の人に対して不安やうつ状態を軽減する効果が認められました。特に不安障害やうつ病の改善には、30分を超える運動を週3回以上、8週間より長く行うことが効果的であるということがわかりました。(※28)
健康な勤労者606人を対象にした2013年の研究では、運動習慣とメンタルヘルスの関係について分析が行われました。最初に運動習慣について確認したところ、もともと運動習慣がある方は抑うつ度が低く社会適応度が高いことが判明しました。
その後、1日あたり30分のウォーキングプログラムを4週間実施したところ、運動習慣がなかった人の抑うつ度が下がり社会適応度が上がったことからウォーキングはメンタルヘルス不調の予防に有効であると認められました。(※29)
2015年の研究でも、うつ病で産業医科大学病院神経・精神科に通院している人に対して週3日以上のウォーキングのプログラムを8週間行ったところ、うつ病の精神症状が改善したという結果が出ています。(※30)
他にも、群馬県中之条町では65歳以上の全住民約5,000人を対象にした継続的な調査が実施されています。運動の強度については、中強度で行う日常活動の割合が高い人ほど心身ともに健康であることがわかりました。中強度の活動とは安静時の3~6倍の代謝量に相当し、具体的には速歩きなどが該当します。低強度では健康に効果がみられず、高強度では遺伝子が傷つき重い病気になる可能性が高まります。そのため様々な病気を予防し健康状態を良好に保つためには、平均して一日に8,000歩程度、そのうち速歩きが20分程度含まれているのが理想的といえます。うつ病の場合は1日に4,000歩以上、そのうち速歩きが5分以上で予防できる可能性があると考えられています。(※31)
いずれの研究も、運動が心の健康維持や不調の改善に効果的であると結論づけています。特にうつ病や不安症状などの改善には、激しい運動よりも速歩きやウォーキングのような運動を継続して行うことが有効であることが示されています。
運動が体だけでなく心の健康にも影響する理由には、セロトニンという神経伝達物質やストレスホルモン調節機構が関わっています。うつ病や不安症状を引き起こすのは、セロトニン神経活動の低下やストレスホルモン調節機構の過剰な活性化だと考えられています。
首都大学東京(現:東京都立大学)の研究チームによるラットでの実験では、低強度の運動を自発的に行った場合に、セロトニン神経活動が高くなりました。人間の場合でも4週間の水泳トレーニングがセロトニンに関係する神経に影響を与えることが判明しています。またストレスホルモン調節機構は、運動強度が高いと過剰に活性化し長期的な運動では抑制されるというように運動条件によって変化します。(※32)
つまり、ストレスホルモン調節機構の活動を高めることなくセロトニン神経活動を活性化させる強度で自発的に運動することが、うつ・不安の改善に有効である可能性があるといえます。
これまでみてきたように、復職に向けた心身の健康回復や復職後の健康維持のために休職中に運動習慣を身につけることは有意義です。
また、運動と復職に関する研究としては、2016年に産業医科大学が「うつ病患者の復職成功の鍵は何か」をテーマに実施した2つの調査があります。
休職中の人を対象にした運動が復職に及ぼす効果についての研究では、うつ状態は回復しているものの疲れやすく活動性の低さがみられ睡眠障害や不安症状が残っている休職中の人を、通常治療のみのグループ(通常治療群)と通常治療に加えて運動を行うグループ(運動介入群)に分けて調査が行われました。運動介入群について中強度の運動を1日60分以上、週3回、1ヶ月以上行ったところ、仕事の遂行に必要な短期記憶機能や睡眠の質の改善が確認されました。復職率も通常治療群の66.7%に比べて運動介入群は91%と高く、運動介入群は復職後も継続して働ける傾向がみられました。(図2)(※33)
復職時の活動性の高さと就労継続率についての研究では、復職1年後で比較した場合、復職時に活動性が低かった群の就労継続率は約10%でしたが、活動性が高かった群は約50%と高かったことがわかりました。(※34)
これらのデータから、運動は復職を可能にする効果だけでなく復職後も継続して働く素地をつくる効果まで期待できることがわかります。
運動には、薬物療法に比べて副作用もなく費用もかからないというメリットがあります。怪我やオーバートレーニングに気を付ける必要はありますが、休職期間に少しずつ活動性を高めることは復職を成功させるカギのひとつといえます。とはいえ、ひとりで運動習慣を身につけるのは難しいと感じる人もいるかもしれません。そのような場合は運動プログラムを提供しているリワーク施設の利用を検討することも大切です。
出典:
※28【運動の不安軽減効果及びうつ軽減効果に関する文献研究|山口県立大学大学院論集2002年第3号】
※29【勤労者における運動療法の可能性:うつ病の予防から治療,社会復帰まで|日本生物学的精神医学会誌2015年26巻1号】
※30【The Effects of a Walking Intervention on Depressive Feelings and Social Adaptation in Healthy Workers|産業医科大学雑誌35巻(2013)1号】
※31【中之条研究から見えてきた“病気にならない生活法”|東京都健康長寿医療センター研究所NEWS No.265 2014.11】
※32【うつ・不安にかかわる脳内神経活動と運動による抗うつ・抗不安効果|スポーツ心理学研究37巻(2010)2号】
※33【平成28年度 労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書「うつ病患者の復職成功の鍵は何か」に関する研究|分担研究報告書「復職に向けての運動の効果」に関する研究 うつ病患者の社会復帰への運動の効果の検討】
※34【平成28年度 労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書「うつ病患者の復職成功の鍵は何か」に関する研究|分担研究報告書「復職継続要因」に関する研究 休職中のうつ病勤労者の復職継続要因の検討】
3.まとめ
メンタル不調の症状が落ち着いて復職を考え始めると、「本当に復職できるだろうか」「復帰しても不調が再発してしまうのでは」と不安になることがあるかもしれません。
そのようなときは、今回ご紹介した「認知行動療法」「マインドフルネス」「運動プログラム」など効果が科学的に立証されたプログラムを提供しているリワーク施設を利用することで、不安を軽減することが期待できます。
たとえばリワーク施設のひとつであるニューロリワークでは、認知行動療法に基づく独自のFITプログラムやマインドフルネスや運動を含むブレインフィットネスプログラムなどを提供しています。プログラムの見学も可能ですので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
ニューロリワークの見学お申し込み
【note公式ページ】
《注目記事》『精神疾患者数400万人時代の到来
リワーク支援施設「ニューロリワーク」がこの社会でできること』
【YouTube注目動画】
【参考文献・参考サイト】
・障害者の就業状況等に関する調査研究|2017年4月|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センターNIVR
・障害者の職業紹介状況等の集計結果について|厚生労働省
・リワークプログラムについて/用語意味|うつ病リワーク研究会
・職場復帰支援(リワーク支援)~精神疾患で休職していてなかなか復帰が難しい方を支援します~|みんなのメンタルヘルス総合サイト
・リワークセンター北海道のご案内|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
・科学的根拠に基づく「産業保健における復職ガイダンス2017」|公益財団法人 日本医療機能評価機構ガイドラインライブラリ
・システマティックレビュー|日本理学療法士学会
・認知行動療法|e-ヘルスネット(厚生労働省)
・認知行動療法とは|認知行動療法センターのご案内|認知行動療法センター(CBTセンター)
・産業・労働分野への認知行動療法の適用と課題|認知行動療法研究46巻(2020)2号
・うつ病寛解期の残遺状態に対する統合的復職支援プログラムの試み|精神科治療学28巻6号(2013年)
・セルフ・エフィカシーを高めるポイント|e-ヘルスネット(厚生労働省)
・アクティブガイド|e-ヘルスネット(厚生労働省)
・うつ病の運動療法|The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2018年55巻3号
・教えて!「不安」とうまく付き合うための5つの方法。|Vogue Japan
・専門家からのアドバイス(こころのケア)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
・マインドフルネス|いまここケア|東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
・Mindfulness – Wikipedia
・mindfulness | Origin and meaning of mindfulness by Online Etymology Dictionary
・History of Mindfulness: From East to West and Religion to Science
・MindRxiv Papers | Theoretical Foundations to Guide Mindfulness Meditation: A Path to Wisdom
・Meditation Programs for Psychological Stress and Well-being: A Systematic Review and Meta-analysis | Complementary and Alternative Medicine | JAMA Internal Medicine | JAMA Network (March 2014)
・復職支援における気分障害の再発予防に向けた心理的支援:マインドフルネスに基づく認知行動療法からのアプローチ|産業・組織心理学研究2015年,第28巻,第2号,133-150
(写真素材:PIXTA・photoAC)