1.「障害受容」とは?
「障害受容」とは、自身の障害を受け止め、落ち着いて障害と向き合うことを指します。障害が受容できるまでには、主に5つの段階があると考えられています。以下では、この5つの段階について精神障害を例に挙げてみていきます。
1つ目の段階は、精神障害の診断を受けたがどういう障害なのかよくわからず、自分の現状を冷静に捉えられていない状態です。 この段階は、障害を受容するための出発点といえます。
2つ目の段階は、症状の回復に対して漠然とした期待を抱いたり、障害を楽観的に否定したりする状態です。具体的には、「症状は一時的で、すぐ良くなるだろう」と考えたり、「自分はさほどひどくはないだろう」と障害を軽視したりする状態です。
3つ目の段階は、思うように動けなかったり回復が進まなかったりする中で、怒りやストレス、悲しみを感じ無気力になったり混乱状態に陥ったりする状態です。 心身ともに特に負担を感じやすい段階といえます。
4つ目の段階は、「このままでは何も変わらない」と考え、まずはしっかりと休養をとることからはじめるなど、精神障害と向き合おうとする準備ができるようになる状態です。このあたりから、少しずつ障害を受け止める努力が可能になっていきます。
5つ目の段階では、障害を抱えながら社会参加する方法や、周りの人に支えられながら上手に生活する方法を考えるなど、障害と向き合う期間、いわゆる受容期に移っていきます。受容器に移り、障害とうまく付き合っていけるようになると、「障害受容ができている状態」と判断されるようになります。
2.障害受容のメリット
なぜ障害を受け入れる必要が重要なのでしょうか。それは、障害を受け入れることで日々の「生きやすさ」や「過ごしやすさ」につながるためです。
障害を受け入れることで、自身の障害を理解し、対策を練ることができるので、障害に振り回されにくくなります。たとえば、体調不良を起こしやすい環境を理解することで、適切な対処法を考えられるようになるため、障害による体調不良を引き起こしにくくなります。また、障害特性上の不得意なことを理解することで、自身に適した職業選択や職務選択を行うことが可能となり、得意なことが見つかり新たな就労への道が見つかる可能性も広がります。
これに対して、障害受容ができずにきちんとした障害理解ができていない場合は、体調不良を引き起こしやすくなったり、障害特性上、遂行するのが困難なことを自身の怠慢や能力不足と認識してしまい、多くのストレスを受けやすくなることがあります。その結果、不安定な状態が続き、安定した就労や生活につながりにくくなってしまいます。(社会参加を目指す自立訓練(生活訓練)事業所での相談はコチラから)
3.障害受容を経て、障害の理解と対策に活かす
障害受容ができると、それを活かして「障害理解」や「障害への対策」も可能となります。
障害理解
障害理解は、自身の障害や症状、特性について把握することを指します。障害を理解する上では、「体調不良を引き起こしやすいのはどういうときか」「障害特性上、行うことが困難なことは何か」「障害特性上、得意なことは何か」など、ポジティブな要素とネガティブな要素を共に理解していくことが大切です。
具体的には、「①障害や病気について正しい知識を身に付けること」「②自身に現れやすい症状や現れにくい症状を振り分けること」のふたつから始めて、自分のケースに落とし込んでいきます。
障害への対策
障害への理解が深まったら、次は対策を練ります。 この段階では、自分で対処できるセルフケアの方法を検討していきます。効果的なセルフケアは人によって異なりますので、実施したセルフケアがどの程度効果があったのかを常に検証し、自身にとって適切なものを見つけるようにしましょう。 セルフケアについては、【安定した復職を目指すために身に付けたい、「セルフケア」の基本】 でも触れています。
4.障害理解に取り組むときの注意点
日々の生活の中での負担を和らげることができる障害理解ですが、取り組む際に押さえておくべき点がいくつかあります。
①障害理解に終わりはない
障害理解に取り組む上で、しばしば「取り組むのは就職するまで」「復職した後は不要」と考えられがちです。もっとも、障害理解や障害への対策を練ることは採用や復職可否の判断を乗り越えるためだけのものではなく、その後も過ごしていく上で必要な取り組みであることから、「特定の時点で終わりを迎える取り組み」ではありません。日々の生活の中で自身の状態は常に変化していく可能性があることからも、定期的に振り返ることを意識しておく必要があります。
これは体調が安定している場合も同様で、安定した体調を維持するための対処を行う必要があります。積極的な対処の必要性が低下してもなお、対処自体は不要にならないという点を押さえておくことが大切です。
②障害受容を疎かにしない
まれに、障害受容をせずに障害理解に進んでしまうケースがありますが、障害を「頭で理解すること」と「心から理解すること」は異なります。自身の障害を知識だけで理解するのではなく、心から受け止めて自分の状態に落とし込んでいかなければ、適切な対策を練ることは困難です。こうした理由から、障害を受け止めることこそが最初のステップになります。
5.まとめ
障害受容ができれば、障害を理解して適切な対策を練ることができるため日々の生活の中で障害に振り回されにくくなります。それゆえ、復職や安定した就労を目指す上で障害受容が欠かせないポイントといえるでしょう。 「自身の障害をまだ受け止められない」という方は、今回の内容を参考に、少しずつでも自身の障害と向き合っていくことが大切です。(社会参加や復職、安定した就労を目指す施設の見学をご希望の方はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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