「休職」について押さえておきたいポイント3つ
休職するにあたっての確認事項
今の仕事からすぐにでも逃げたしたいと考える方も少なくないかもしれません。
とはいえ、退職や休職となるとその後の収入源はどうなるのか、無事に復職もしくは再就職ができるのかといった疑問は後を尽きないといえます。
ここでは、休職の場合に押さえておきたい点についてみていきます。
これから会社を休む場合に、最初に確認しておきたいのは「そもそも自分の会社に休職制度があるか」という点です。
制度の有無は、企業によって異なります。一般的には大企業であれば福利厚生の一環として整備されていることも多くありますが、これに対して中小企業や零細企業では、全くといっていいほど整っていないこともあります。
休職制度は法律によって定められた制度ではないため、雇用契約や就業規則で確認する必要があります。確認できない場合には、人事や労務担当者に相談しましょう。休職制度があることを確認できれば、担当者と話し合いながら手続きを進めていくことになります。
一般的な手続きの流れとしては、病院での診断を経て、診断書を発行された後に人事労務担当者に休職の旨を伝えます。その後、事務的な処理を行い、休職期間に入ります。
①休職にまつわる給与のこと
休職制度があることが分かれば、次に気になるのは(収入)についてです。
こちらも企業によって個別に定められていることから、担当者に確認する必要があります。休業中であっても給与を補償するという企業もありますが、概ね大企業に多いと考えてよいでしょう。多くの中小・零細企業であれば、休職中の給与はあまり期待できません。
なお、企業から給与が出なくとも、一定の条件を満たすことで健康保険から傷病手当金を受け取ることができます。
具体的な手続きは企業の担当者と行うことが多いため、こちらも担当者に確認する必要があります。一般的には、事業主から十分な報酬が得られない場合に支給される手当と位置付けられています。
(出典:「全国健康保険協会」病気やケガで会社を休んだとき)
支給される条件としては、
①業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること、
②仕事に就くことができないこと、
③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、
④休業した期間について給与の支払いがないこと、となっています。
支給される期間は、開始日から1年6ヶ月です。
傷病手当金の一日当たりの金額は、
「【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)」と定められています。
(出典:「全国健康保険協会」傷病手当金について)
また、休職の原因が労災と認定された場合には、労働者災害補償保険(労災保険)から給付金を受け取ることができます。受け取れる金額に関しては、休業している間の給与の8割に加え、治療にかかった金額や後遺症への給付など、条件によって異なるため個別に確認する必要があります。
(出典:青葉法律事務所「労災で受け取れるもの」)
②休職中の過ごし方・注意点
休職期間に入る上で重要なのは、復職をあせらない(ゆっくりと休養する)という点です。
一般的に、うつ病の改善には時間がかかります。そのため、復職をあせって休職期間が短くなり、原因を根本的に解消できていないことが要因となって再び体調を壊すということも考えられます。休職期間に入ったのであれば、主治医と相談の上、あせらずに復職に向けて取り組んでいくことが大切です。
休職期間になると、日々の生活が乱れがちです。朝はファストフード、昼は外食、夜はコンビニのお弁当といったように、栄養バランスを維持するのが難しい食事になりがちです。近年ではコンビニや外食でも栄養バランスを考えたものが多くなっていますが、自炊で栄養バランスを摂れる食生活に切り替えることで、身体とライフスタイルを整えることができます。
食事面以外では、休職の時間を使ってついついスマートフォンのゲームなどに時間やお金を費やしてしまいがちです。休職中は休養期間であって延々と娯楽に興じるという期間ではないため、こちらもほどほどに抑えておくことが大切です。
③休職後の選択肢は2つ
休職期間に入る上で、その後の動きとして復職と離職で葛藤する方もいるかもしれません。
復職の前提で休職しても、そこから一転して離職の選択をとるというケースもみられます。
特に仕事にやりがいを感じていない場合や、職場に親しい友人・知人がいない場合には、休職期間中につい気持ちが離れてしまいがちです。
そのため、離職という選択肢を選ぶことも考えられます。たしかに退職は問題解決策のひとつといえますが、根本的な原因を解決しなければ、新しい職場で再発の怖れがあります。
そのため、まずは復職を前提に、さまざまな専門家や専門機関の協力のもと、心身の回復を目指すことが効果的です。
休職原因の解決策
復職(リワーク)のための専門施設
第三者の協力のもとで復職を考える場合、復職を考える方を対象とした復職(リワーク)施設の活用が勧められることもあります。
休職期間を有意義に過ごすためには、専門家と関わり、段階を踏んで症状を改善していくことが効果的です。
リワーク施設には、医療機関が運営しているものもあれば、地域障害者職業センターのように各都道府県が運営しているものもあります。施設や運営機関によってそれぞれの特徴があります。
医療機関であれば、治療の一環としてリワークプログラムが提供されるという特徴があります。費用に関しては、原則として有料となります。これに対して地域障害者職業センターであれば、治療ではなく精神障害者総合雇用支援の一環としてリワークプログラムが提供されます。費用に関しては、昼食代などの実費を除いて無料となります。
このように、施設によって細かな点に違いがあるため、相談や見学に訪れて確認しておくことが大切です。
身体をつくるプログラム
心身を壊して休職される方が多くいることから、身体をつくる基礎となる食事の重要性は非常に高いものといえます。
そのため、復職に効果的なプログラムを考える上で、メンタルケアに関するものだけでなく、身体をつくる食事に関するものも活用していくことが大切です。
復職支援事業所の「ニューロリワーク」では、休職中に健全な身体をつくるためのプログラム(ブレインフィットネスプログラム)のひとつとして、「不足しがちな栄養素」を座学として提供しています。
このプログラムでは、普段の食事を見直すことの大切さを伝える一環として、脳の機能が低下する栄養不足を5タイプに分けて学びます。
落ち込み気分を食事で和らげることを意識して、不足しがちな栄養素を参考に献立を考えます。
プログラムの冒頭では、身体の症状が心の健康の指標であることに触れます。
睡眠障害や食欲不振、めまい、腹痛、疲労感などを感じて内科を受診し、原因がみつからなかったというケースを経験された方もいるかもしれません。
これは、気分の落ち込みが原因となっている可能性も考えられます。気持ちの変化は、ときに意欲や気力に影響を与えます。特徴的な症状としては、「意欲や気力の喪失」「感情を抱きにくくなる」「悲観的になって自分を責める」「イライラして焦りを感じる」といった傾向が挙げられます。
こうした症状を改善するために、まずはワークを通じて前日の食事を見直します。個別のワークだけでなく、グループワークを通じて10分間ほど周囲の方とディスカッションを行うこともあります。
脳の機能が低下する栄養不足は、5つのタイプに分類することができます。
主な症状として「①低血糖症」「②亜鉛欠乏症」「③タンパク質欠乏症」「④ビタミンB群欠乏症」「⑤鉄欠乏症」が挙げられます。
低血糖症では、イライラや不安が原因で甘いものを食べることが癖になる傾向がみられます。
亜鉛欠乏症では肌が乾燥しやすい、傷の治りが悪く膿みやすい、髪が抜けやすいといった症状が見られます。
また、鉄欠乏症では立ちくらみや耳なりなどの症状がみられます。このように、不足する栄養素によってそれぞれ異なる症状が現れます。こうした症状・原因についても、プログラムを通じて詳しく学んでいきます。
栄養不足によって生じる症状について学んだ後は、落ち込む気分をやわらげる食事法について学びます。
たとえば、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンを増やす方法として、「太陽光を浴びてから食事を摂る」「誰かと一緒に食事を摂る」「よく噛んで食べる」といった方法について触れます。また、セロトニンを作る栄養素としてトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物の重要性や役割についてもみていきます。
トリプトファンはセロトニンの原料となる必須アミノ酸で、ヒトの体内では合成できないため食事を通して摂取することが不可欠です。ビタミンB6は、トリプトファンを体内でセロトニンに変える役割を果たします。また、炭水化物は脳内にトリプトファンを取り込むサポートの役割を果たします。
トリプトファンは大豆やナッツ類に多く含まれ、ビタミンB6は赤みの魚やレバー、ニンニク、トウガラシに多く含まれます。
また、炭水化物は玄米や雑穀米、大麦に多く含まれます。これら3つの栄養素がバランスよく含まれている食材には、バナナやキウイフルーツ、いちじくなどがあります。
このように、「不足しがちな栄養素」プログラムでは、どのような栄養素・食材を取り入れることで健康な身体を実現できるかについて学びます。さらに、ワークにて実際に献立を考えることで、学んだことをその日から活かすことができます。
まとめ
これから会社の休職を考える上で、まず押さえておきたいのは手続きや給与のこと、そして休職中の過ごし方です。
ここでは主にこれらについて詳しくお伝えしてきました。
休職中にどのように過ごすかが、休職後の新しい生活の質を大きく決定付けることになります。休職中に利用できる施設にはさまざまな種類があるので、費用やプログラムの観点から、ご自身に最も合ったものを選ぶことが大切です。
復職に関するさまざまプログラムを提供している復職支援事業所ニューロリワークでは、復職を目指す方に向けたプログラムの見学を承っています。
ご希望であれば1日~3日ほどプログラムを体験いただき、利用の有無をお決めいただくことができます。
休職時の過ごし方でお悩みであれば、ぜひお越しいただければと存じます。効果的なプログラムを受講され、お悩みが解消されることを心から願っております。
ニューロリワークの見学お申し込み
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《注目記事》『精神疾患者数400万人時代の到来
リワーク支援施設「ニューロリワーク」がこの社会でできること』
【YouTube注目動画】
【参考文献・参考サイト】
・全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」
・全国健康保険協会「傷病手当金について」
・青葉法律事務所「労災で受け取れるもの」
・e-ヘルスネット【たんぱく質】
・サンポナビ「【社労士監修】休職期間はどう決まる?休職中の給料・手当・手続き10の疑問」
・クエストリーガルラボ「休職とは?休職中のお金の話から申請方法~復職・退職まで徹底解説!」
・Manegy「社員が休職する際に必要な会社の手続きに関して」
・JobQ「【休職について】会社を休む前にもう一度しっかり考えてみよう」
・まいにちdoda「いざというときに知っておきたい! 欠勤とは違う休職制度とは」
・労務問題弁護士ナビ「うつ病で休職する際の対応ガイド|給与や傷病手当金申請条件は?」
・en人事のミタカ「人事労務Q&A」
(写真素材:PIXTA)